Three Billboards (スリービルボード)

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2017年に公開。第90回アカデミー賞では6部門計7つのノミネートを受け、俳優陣も主演女優賞や助演男優賞をかっさらった話題の映画。

好き嫌いは分かれるだろうなぁ、と思う。

 

あらすじ

娘を無残に殺されてしまった母親(ミルドレッド)が、犯人を逮捕できずにいる警察に対して講義するために、町の外れの道に3枚の看板広告を設置する。

3枚の看板を発端に、ミルドレッドと警察の関係性はどんどん悪くなり、様々な問題が勃発していく。

 

 

物語の前半は、とにかく、登場人物がぶっとんでる、という印象。

特に、ミルドレッドと、警察官のディクソンがめちゃくちゃ悪い。

普通の人だったら抑えるであろう感情、怒りを剥き出しにしていて、「そこまでやる?!」というくらい。

 

ディクソンはマザコンで人種差別者。

これは、物語の舞台がミズーリということにも関係している。

ミズーリでは2014年に白人警官が黒人の若者を銃殺した事件があったり、人種差別が根深い。

 

一方のミルドレッドも、娘を殺された可哀想な母親といえば悲しみに暮れて・・・

という訳ではなくて、歯医者の指に穴は開けるは、息子の友達を蹴飛ばすは、、、悪いことも平気でやる。

 

ミルドレッドが設置したスリービルボードには、

「How come officer willoughby?」と、警察のボスであるウィルビーの名前が書かれた。

 

ウィルビーは末期ガンに侵されていて、余命わずか。

引き合いに出したことで、ミルドレッドは街の人達から顰蹙を買って、どんどん孤立していく。

 

看板をに腹をたてたディクソンは、広告屋のレッドを襲撃して窓から放り投げたり(!)、それに対抗してミルドレッドは警察署に火を放ったり。

 

まさに、『怒りが新たな怒りを呼ぶ』、カオスな状態が続く。

 

そんな中、署長の自殺をきっかけに、じょじょに状況が変わっていく。

 

署長の手紙は良かった。

死を選んだことは、家族にとっては辛いことだっただろうけど、良い思い出のままの自分を覚えていて欲しいと自ら命を断った署長は、誰からも愛されるナイスガイだった。

 

署長の手紙は、ミルドレッドにも、ディクソンにも、変化を与えることになる。

それまで『怒り』を表現するばかりだった登場人物が、徐々に変わっていく。

 

孤立していたミルドレッドにも、見ず知らずの人から広告費が送られたり、小男に助けられたり、新しい署長に「周りにいるのは敵ばかりじゃない」と声を掛けられたり。

 

ディクソンも、署長の手紙と、自分が痛めつけたレッドの優しさに触れて、(同じ病室かよ!と突っ込みたかったけど。レッドがいい奴すぎる・・・オレンジジュース、飲む?)

少しずつ変化していく。あんなにくそ野郎だったのに、犯人と思われる人のDNAを取るために喧嘩したり、死ぬそうになりながらも事件のファイルを守ったり。

 

怒りの連鎖が、思いやりや優しさに変化していく。

決して優しそうには見えない、不躾で悪いやつらばっかりなんだけど。

 

スリービルボードは、確かに何かを変えた。

 

 

 

ラストのシーンは、好き嫌いが分かれるだろうなぁ。

犯人は捕まらないけど、そこが主題じゃないから良いのか。

ミルドレッドと、ディクソンの最後の会話が好き。

 

「一言いわせて。警察署をやったのは私。」

「あんた以外に誰がいるんだよ。」

 

この二人が、本当に良い表情をする。ちょっと歪んだように笑う、田舎者の不器用さが

 出ていて良い。

あとは、アクの強い登場人物が多いなか、署長が本当に粋だった。

この3人の演技が映画をぐっと深くしていたと思う。

脇役も皆味があって、見応えがあった。

久々に、ヒリヒリするような作品を見た気がする。